京都大学社会科学研究会とは

京都大学経済学部三回生 吉本崇史

はじめに

 第七回目の京大公論は、京都大学社会科学研究会(社研)02年度代表、経済学部三回生の吉本崇史氏へのインタビューです。

1.「社研」とは?

 「まあ一言で言えば『とにかく何でも勉強・研究してるサークル』なんですけどね。10年位前に決まったという、今では有名無実化してしまった規約によれば、『科学的精神を獲得すること』とあります。わかりやすく言うと、物事をいろんな角度から見て、古いものから新しいものまで全部見て社会を見る目を養おう、というのがコンセプトです。社研は歴史が古く、大学院生や、教官になられた方もいるので、そういった方に、私たちのチューターとして見てもらえる、というのが社研の特徴ですね」

  社研を構成しているメンバーのほとんどが文系学部に所属しており、そのうち7~8割が経済学部の学生である。社研内での大学院への進学率は高く、これも、好奇心の強さや世の中について議論したい、という学術志向の強い人が集まってくるためであろう。また最近では公務員志望の人も多いようだ。社研のなかでも一際面白い活動である、『科学方法論研究会』について伺った。

 「社研のコンセプトの一つに学際的視野を持とう、というものがあります。自分の専門分野にのみ特化するのではなく、様々な分野の勉強をして、視野を広げようというものです。社研には様々な研究会があって、皆いくつかに所属するのですが、その中の科学方法論研究会というのは、毎年一つテーマを決めて、それについて論文を書く、というものです。これをすることによって、一人の専門分野が研究会みんなの一般分野になるんですね。去年はウィルソンについてやりました」

 学際といった言葉が聞かれたが、社研のコンセプトは本学の総合人間学部設立の趣旨を思い起こさせた。文系、理系の枠を取り、必要であれば専門外の論文を読む、それを発表する、といったプロセスが単なる『教養』として身につくだけでなく、物事を見る『視野』であったり、『問題解決能力』であったりするものが養われていくのであろう。社研の外部への発信活動について伺った。

 「まったくの外部の方への情報発信は、他の京大の団体と違ってやっていません。ただし、毎年NFで講演会を主催していますし、年に1回、同志社や立命館、大阪市立大学の団体と論文発表会を行っています。そこではお互いにコメントしたり、共通する論点について議論したりしています。基本的に自分たちの社会の見方を養っていく、ということなので、内部での議論を特に重視しています」

 『資本論を読みつつ科学的精神を養う』という、昔からの社研の精神を受け継ぐ他大学の団体と活動を行っているようだ。ではなぜ資本論なのだろうか?

社会科学研究会 吉本氏

2.なぜ「資本論」なのだろうか?

 今では、社研で「資本論」を読むのは一部のメンバーであるが、それでも今なお「資本論」が読まれるのはなぜなのだろうか。
「昔は左翼的傾向、マルクス的傾向があったから、というのもあります。しかしそれだけではなく、時代を経て残ってきている古典というものは、論理構成に本当に無駄がないんですね。それを知るためには資本論でも国富論でも、一般理論でもなんでもいいんです。僕らはノウハウがある、ということで資本論を選んでいるだけなんです。そうやって、論理的な力、ものを見る力、読書する力、そういったものを養っていけると思っています。あと、社研の独自性としては、資本論を読むことにプラスして、思想に強い、ということが挙げられます。現代的なテーマも、実は背後で昔からの思想がキーとなっている場合が多々あります。こういった思想に興味のある人が多い、ということも特徴的ですね」

 資本論を聖典として、でなくただの一つの文献としてとらえているようである。独りよがりな解釈になってしまわないよう、読んだ内容を人に説得させる、また大学院生や教官のようなチューターに指導してもらう、といったノウハウが資本論には最も充実しているようだ。もちろん、資本論を勉強する人ばかりではなく、社研には新自由主義的な考えをもつ人、右翼的な考えを持つ人など、様々なメンバーがいるということを付け加えておく。
 吉本氏に「京大」について伺ってみた。

3.「京大生」について

 「僕もまだ京大生3年目ですからねえ……(笑)。ただ、3年前と比べても今の1、2回生は授業に出るようになりましたね。今年の総人にはびっくりしました。またゼミなども充実してきて、大学側の教育に対する努力の姿勢も見えてきましたね。ただ、勉強に対して受け身の姿勢の学生が増えてきたのでは、と思います。授業を受けると、自然と頭に入ってくるし、独りよがりにはならないのでいいと思うのですが、個人的にはもっと『自分はこうやりたいんだ』というものを持っている学生が好きですね。社研でももっと自分のやりたいことを持っている学生が増えると面白くなるんですがね。また、最近就職活動をして思うことは、勉強だけでなくても、体育会であったり、語学であったり、趣味であったり、突っ走ってる人はすごくいいなぁと感じます。ただ漠然と授業に行って、漠然と生きてるんだったら、うちに入って(笑)、自分の問題意識を高めていってもらいたいな、と思いますね、それはゼミでもなんでもいいと思いますが」

 学問に対する受け身の姿勢の是非は議論の余地があるが、常に社会に対してアンテナを張り、問題意識を高めていくことは、これからの社会で求められていくことになるだろう。
 社研は、京大の『自由の学風』の真の意図としているところの、『学問に対する自立』が出来る者を輩出している、という印象を受けた。視野を広げる、論理的に考える、といったことを達成するには何をしなければいけないか、考えてみてはどうだろうか。

(文、写真:篠田優介)
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