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 さて、kyoto-u.comについて語る前に、日本の最大手掲示板サイトとして、「2ちゃんねる(2ch)」を挙げなくてはならないだろう。この掲示板は1日におよそ300万人が訪れる掲示板であり、1日およそ2000万ページビューを誇るサイトである。日本のネット文化の発信基地であり、ネットのいい点と悪い点を最大限に引き出したサイトである。この日本最大の掲示板サイトで最近、注目すべき動きが出てきている。それは、2chの共同社会化という現象である。

 2chの共同社会化という現象が最もよく観察できたのは2001年8月末に起きた2ch閉鎖騒動である。当時、2chにアクセスする人の増加が著しくなった結果、月に700万円という高額のデータ転送量の支払いを求められた2chは閉鎖の危機にあった。しかしその時、UNIXの話題を扱う2ch内の掲示板で自発的に公開プログラムを打ち始めたプログラマがおり、転送量の大幅な減少に成功したため、2chは閉鎖を免れた。この時、多くの2ch利用者が2chの転送量削減のため、やはり自発的にアクセスを控え、有料サイト化にも同調する利用者が多く出た。結局有料化はなされず、今日でも一部を除いて2chの情報は無料で提供されているが、この事件は2chが一つの共同体として機能しているという事実をネット界に知らしめた。この他、2chのマスコットキャラである「ギコ猫」がある有名企業(しかもこの企業は「ギコ猫」に対し何らかの関係があったわけではなかった)に商標登録されそうになった時に、2chの利用者が一致団結してその企業に抗議行動を起こし、それを撤回させたこともまた2chの共同社会化を現す現象として記しておきたい。

 2chという匿名掲示板での共同社会の形成という現象は完全にバーチャルな世界で行われている。総理大臣が書き込もうともそこらの中学生が書き込もうとも現実世界における記号性を剥奪され、「レス」という形に切り取られてしまう2chでは、全ての利用者は名もなきレスであり、そのレスという枠の中で活動しなければならない。その平等感がユーザーの間に一体感を生み出しているのであろう。また、もともと匿名性掲示板であるというブランドを確立して成長してきた2chは、他のサイトに比べてアングラ感をユーザーに与えるサイトであり、アングラなサイトにアクセスして会話をしている自分を他のインターネット利用者、もしくは非インターネット利用者に対して差異化しようとした結果、同族意識が高まって共同社会のようなものが形成されたとも言えるだろう。こうしたアングラな場所では仲間内でだけ通じる特殊な用語が多様される傾向にあるが、実際に2chの常連ユーザーは自分を2chの常連、2ちゃんねらーだと主張するため、2chの常連ユーザーは一般社会とは異なるネット用語を使いたがる傾向にある。「がいしゅつ」(既出を故意に誤読)「香具師」(奴→ヤツ→ヤシ→香具師の連想)「基地外」(気狂いを故意に誤変換)などが特殊な用語の一例である。この他にも2chでのみ通用する言葉は数百にものぼると言われている。

 このように、2chにおいては完全にバーチャルな形で共同社会が形成されつつあるが、他の掲示板サイトにおいてはこの事情が少し異なる。他の掲示板サイトもまたインターネットというバーチャルな環境の中で共同体を作るが、他の掲示板サイトではそれが現実とある程度繋がった形で共同社会が形成されるという点が2chと異なる点である。例えば、釣り、野球、プログラムといった趣味を中心にした集まり、または主婦、学生、サラリーマンなど、現実世界での生活環境を共にする者たちの集まりといった具合にユーザーの間にある共通点が見出せるのがそれ以外の多くの掲示板サイトの特徴である。こういった掲示板での特徴は管理人を含む常連ユーザーの合意によって掲示板上でのルールやマナーが決定され、それに従うことによって掲示板の利用や管理における混乱を避けようとする点である。この傾向は2chにも存在し、多くのカテゴリには自治スレッドと呼ばれるその掲示板でのルールやマナーを決定する場所が存在している。この状況だけをもって共同社会というべきかどうかは疑問があるかもしれないが、互いが快適さを得るために無償で政治的な行為が行われているという点は注目すべきだろう。

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