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京大公論

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あなたは法科大学院に行きますか?

伊藤塾 塾長
伊藤 真

一、法科大学院か現行司法試験か
二、法科大学院の先にあるもの
三、司法試験で問うべきもの
四、社会の求める法曹像と法曹教育

伊藤真1

二、〜法科大学院の先にあるもの〜

 ところで、法曹養成のプロセスとして法科大学院が論議されています。
 しかし、法曹養成は法科大学院に尽きるわけではありません。法科大学院入試に合格し、法科大学院の卒業を経て、さらに、新しい司法試験を受験・合格し、さらにその後、司法修習を受けて、やっと法律家となれるのです。 開校が迫っているということもあってか、現在の議論は法科大学院についてのものに集中していますが、法曹養成のプロセスとしては、当然に卒業後のことも考えておかなければなりません。ところが、法科大学院以降のプロセスをどうするかは、大きな枠組みが決定されたのみで、その内容の検討や吟味がなされているとはいいがたい状況です。さらにいえば、どうするべきかについての広い範囲からの発言や議論があったともいえません。
 新しい司法試験をどうするべきかの議論は、何より「現在の司法試験のどこに問題があるか」の検討が不可欠のはずです。現在の司法試験に問題がないなら制度を変更する必要はありません。現在の司法試験の問題点としては、極めて漠然と、最近の司法試験合格者のレベルの低下であるとか、その能力に対する否定的な評価が語られることがありますが、そのような漠然とした個人的な印象としてではなく、もっと実証的な調査や検証が必要です。ましてや、それを現行司法試験という制度のせいにするからには、それだけの相関性や因果関係まで明らかにすべきではないでしょうか。
 では現行の司法試験の何が問題なのか。多くの問題があるでしょうが、最大の問題は本来資格試験であるべきものが「競争試験」となってしまっていることです。司法試験が法曹として必要な知識や能力を試す試験であるなら、必要とされる一定のレベルに達していると判断されれば、それで合格を認めるというのが合理的なはずです。もちろんこの場合、年によって法曹資格を得る者の数は変化することにはなります。受験生全体のレベルが高い年度は合格者が増えるでしょうし、レベルが低ければ合格者は少なくなります。
 しかしながら、現実にはそのようにはなっていません。
 司法試験は、つい10年前まで合格者が400〜500名という極めて少ない数に固定されていました。
社会・経済が疲弊していた戦後すぐはともかく、経済成長の最中も、日本経済が国際化していく過程でも、毎年同じ人数とされていたのです。もちろんそれは、受験生の数が何人になろうが同じです。受験生が増えようが増えまいが、あるいは受験生全体のレベルが上がろうが下がろうが、合格者の数についてはおかまいなしという状況が続いていました。つまり、合格を目指す受験生の多くが勉強すればするほど、全体のレベルが上がり、相対評価の中では合格に達することがより困難となってくるのです。
平成に入ってしばらくして、ようやく合格者を増やし始めましたが、結果的には弥縫策でしかなく、今回の司法制度改革の議論が生じる原因となっています。
私は、ここでは司法改革の議論に至るプロセスの是非を論じるつもりはありません。むしろ問題としたいのは、結局新しい司法試験になっても合格者が「2010年に3000人」というように、競争試験の形式が維持されると考えられることです。(※注2)
 確かに、3000人という数字は現在の1200名(2003年度予定)に比べれば合格しやすいように見えます。しかし、この数字が現実の受験生が何人になろうが、全体のレベルがどうなろうが同じであるとすると、実質的な競争はなお厳しいものとならざるをえません。法科大学院卒業生のレベルが高くなり、みんなが必死になって勉強すればするほど、新しい司法試験の競争も厳しいものとなってくるのです。
 これでは現在の司法試験と同じです。司法試験の競争試験化という「出口」の問題を解決しておかないと、たとえ法科大学院で充実した教育がなされたとしても、試験における競争の厳しさは今までと同じことになるのです。

 注2:司法制度改革審議会の意見では,「法曹人口の大幅な増加を図ることが喫緊の課題である」としており,これを受けた司法制度改革推進計画(平成14年3月19日閣議決定)では,司法制度改革審議会意見を踏まえ,平成14年に1,200人程度,平成16年に1,500人程度に増加させ,さらに法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら,平成22年ころには3,000人程度とすることを目指すとされています。司法試験管理委員会においても,この司法制度改革審議会意見を尊重することを決定しており,平成14年度の最終合格者の決定にあたっては,同意見の内容に沿った措置が講じられています。(法務省のホームページより)

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