京大公論
あなたは法科大学院に行きますか?
伊藤塾 塾長
伊藤 真
一、法科大学院か現行司法試験か
二、法科大学院の先にあるもの
三、司法試験で問うべきもの
四、社会の求める法曹像と法曹教育
三、〜司法試験で問うべきもの〜
司法試験が持つもうひとつの問題はもちろん出題の内容です。 アメリカのロースクールの教授にこう言われたことがあります。「新しく日本でもロースクールを作ってよりよい法曹を育てたい?それは簡単だ。司法試験を変えればよい。学生はみんな試験に向けて勉強する。理想の法律家が身につけるべき事柄を問う試験にすればよい。」 確かにその通りです。では現在の司法試験はどうでしょうか。現行司法試験は択一試験においても論文試験においても出題内容や傾向を年ごとに変化させています。論文式試験では、かつての理論問題中心から事例問題が中心となってきています。司法試験が法曹としての資質を問う試験であるならこれは当然ですし、良い方向への変化だと評価できるでしょう。択一式試験は依然として知識の有無を問う出題が多いのですが、それでも単純な知識の有無から、事例の処理能力を問う形式が増えてきています。
また、論文式、択一式に共通して、判例を素材とした出題が増えています。法理論を学ぶことももちろん重要ですが、法律「実務家」にとってはそれが現実の事件でどのように使われるかを学ぶことがより重要です。司法試験で判例が多く出されるようになれば当然ながら受験生も判例をしっかり学ぶことになります。新しい判例が試験で出題されるようになれば、受験生は普段から注目すべき判例が出ていないかに目を配るようになります。そして、法律実務家に必要な法を実際に使う能力を養成することになるのです。
このように、試験の出題内容は学生の勉強の内容を誘導します。試験の内容や方式を工夫すれば、学生あるいは受験生が何を学ぶかをコントロールすることができるのです。このことは現行司法試験でも、法科大学院でも同じです。法科大学院の理念や教育がどのようなものになったとしても、やはり学生の関心は試験に集まらざるをえないのです。
となれば、新しい法曹養成制度設計の中で、新旧いずれの司法試験について、その中身をどうするかはもっと広汎に議論がなされてもいいはずです。
現在の司法試験についていえば、事例処理や判例を中心に出題するようになったのは、具体的に考える力が問われるという意味では良いことでしょう。しかし、2時間で2通という物理的な制約は大きいです。また、事例が長文化・複雑化することで論じるべきテーマが多くなっています。事例を通じて様々なことを考え得たとしても、2時間で2通の枠内では、それを答案に出すことは難しいでしょう。事例を深く考えた人の答案よりも、むしろ個々のテーマや論点を少しずつ、かつ、当たり障りなく触れた答案のほうがかえって評価されているように思えます。
※ 司法試験について詳しく知りたい方は法務省のホームページhttp://www.moj.go.jp/、
もしくは伊藤塾のホームページhttp://www.itojuku.co.jp/まで
Copyright (C) 2008 kyoto-u.com All rights reserved.



