京大公論
3.気づかないこと
ちょうど100年前、ライト兄弟の飛行機が初めて空を飛び、人類は3Dの世界へ飛び出しました。しかし、これが新しい時代の幕開けと思った人は当時何人いたでしょうか? 宇宙へ行くことはFictionというより、Fantasyにしか過ぎなかった時代です。20年前、第3の波が押し寄せると言われ始めた頃でも、今日のITの進歩は考えられませんでした。小さな箱の中から宇宙を眺め、世界と交流できるなんて当時何人の人が予想したでしょうか? 変革期に変革に気づかない例は世界文化史の中に多数あります。200年前に今が産業革命の真っ只中だと思った人はまずいないでしょう。今、世界は急速に確実に動いていますが、いまだそれに気づかない人もいます。「ITなんて単なる流行語でもう古い。」という人はITで一儲けしようとして失敗した人です。20年前に20年後を予測すること以上に、これから20年後を予測することは困難です。アスクレピウスのように、してはならない技術(それは某国の大量破壊兵器よりもっと怖いものかもしれない)を作り上げてしまうかも知れません。
高等教育もまた変革期です。日本は長寿高齢化社会に入り、子供はどんどん減っていき、大学全入も目前です。しかしながら入学トラブル・学力不足などの話題が相変わらず後を絶たず、大学の価値は単調減少をたどっています。今日、さまざまな形で大学改革が進行中ですが、従来の大学制度が自然崩壊していくことは明らかでしょう。学生に見捨てられていく大学、第3者に売却された大学などのニュースも珍しくなくなりました。一方、大学以上に力を持ってきた専門学校も現れています。大学だけでなく専門学校・短大などをも含めた高等教育機関全体の再編成が必要になってくるでしょう。大学とは入るには難しいが一旦入ってしまえば、よほどのことがない限り何とかなっていくものです。これは学生だけでなく教員の場合も似たようなもので、今の世の中一般から見れば不思議な現象です。しかしそれを不思議と気づいている人は少ないようです。
日本の大学はほとんど文系であるのに、わが京大は理系が過半数という例外的な大学ですが、文科省ペースで改革が進む中で、研究面では「実学」中心に走り過ぎないことを願っています。京大理系は一見役に立たない基礎科学の研究で世界に評価されていることは周知の事実です。次に教育面では懇切丁寧な授業の制度を作るよりも、自力学習を勧めその重要性を伝えていくべきでしょう。また京大文化は教授会・教職員のみならず卒業生・在学生をも含めて作り上げていくものと考えます。卒業生は卒業したら縁が切れるのではなく、京大文化発展のためのサポーターの役を担っているのですから。
最後に読者諸氏にはモーツァルトやゴッホを鑑賞するのと同じレベルで、星空を眺める心を持ち続けてほしいと願うものです。
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